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ゲームレビュー「WILL -素晴らしき世界-」

 

年末セールで買ったゲームがなかなか面白かったので感想を記しておこうと思う。

 

まず、「WILL -素晴らしき世界-」とはNintendo Switch/Playstation4/Steamにて配信されている中国発のビジュアルノベルで、神様となったプレイヤーが救いを求める人々の運命を組み替え導くというユニークなアイデアが組み込まれた作品。

 

主人公の「願(ユアン)」と犬?の「イシ」は運命を変えることができるペンの力を使って人々の願いを叶えていく。願いは手紙として主人公達の元へ送られてくるのだが、その人々の背景は多岐にわたる。女子高生、刑事、虐待を受けている子供、弟の為に出稼ぎに出た姉などなど。彼らが迎えるはずだった結末を修正していく中で、様々な思いや葛藤を経ながら物語は進んでいき…といったお話。

 

まずストーリーに関して。

このゲームを買った理由は1500円という値段の割に評価、特にストーリーの評判が良かったからだが、評判通りとても楽しめた。(クリアまでは20時間ほどかけたが、ほぼ寝ずにぶっ続けでプレイしてしまった。ちなみにトロコンまでの時間でもある。)肝心の文章は日本語翻訳がとてもしっかりしていたし、後述の音楽と相まってどの登場人物の話も心に残るものだった。特にリ・ジュンとアリシアの話は途中の展開があまりにも可哀想で、続きが気になり優先的にプレイしてしまった。

 

次に音楽に関して。

このゲームの何が一番良かったかというと間違いなく音楽だろう。単体としても非常に好みの音楽が揃っていたし、それぞれがストーリーに対する感情移入を十二分に高めてくれた。特に悲しい系の音楽はストーリーの展開もあって胸が締め付けられる感覚を覚えた。なかでもトゥルーエンド後のメイン画面でかかる音楽はラストの展開を彷彿とさせて今でもゾクッとなる程お気に入り。

 

ここまではいいところ。

ここからは悪いところ。

 

不満点の一つ目として、スキップ機能がないことがあげられる。

このゲームの狙いとして音楽とテキストの相乗効果を飛ばさず楽しんでほしいというのがあるのだろうが、選択肢によってはほぼそのままの結末も多くあるので、スキップ選択の余地は残しといてほしかった。

 

二つ目。このゲームは論理パズルいうことらしいが、ロジックやそのヒントはイマイチな点。

このゲームは各人物の行動の選択や順番を入れ替えることで結末を変えていくゲームなのだが、どの組み合わせの選択が良いかを推理できるものは少なく、ほとんどが総当たりで解決するしかない。ただこれは作中の設定を考えると至極当然のことであると言えるのだろうとクリア後の今では思える。

 

最後に最大の問題点。サントラが単品で入手できない。

これは音楽が気に入った私としては非常にデメリット。steamならゲーム同梱版として入手できるが、PS4ユーザーにもなんらかの手段が欲しかった。

 

 

 

突然だが、私は鬱展開が好きだ。

ただし、それはただ人が不幸になるのが好きなわけではなく、その不幸によって絶望したりする中でその人がどのようにして乗り越えたり、あるいはその中でどんな生き様を見せるのかを見たいからだ。その中でも絶望を乗り越えた上でのハッピーエンドは私が最も好むところである。

 

この物語はハッピーエンドではなかった。私は彼らに幸せになって欲しかったが、作者はそうはしなかった。そういう意味では後味悪い作品ではあるのだが、そんな思いは作中で主人公達が言った言葉を改めて読み返したことで霧散してしまった。

 

主人公達の言うように、「それぞれの決断や選択に、絶対的な正解なんてなく、けれど、その決断や選択には必ず意味がある」のならば、彼らが彼ら自身の「意志」の元で下した「選択」を受け入れなければならない。

 

人が「意志」の元に下した「選択」や「決断」はその人が生きた証だ。それが例え報われない結末であったとしても。